2009年6月15日
[ 国内知財情報 ]
拒絶理由通知について
特許出願の審査、審判において、特許庁から拒絶理由通知が出されることがあります。拒絶理由通知には、最初の拒絶理由通知と最後の拒絶理由通知との2種類があり、状況により、どちらとすべきかが詳細に規定されています。最後の拒絶理由通知が出された場合は、補正の制限が一層厳しくなり、出願人にとっては、不利となります。
本来は、最初の拒絶理由通知とすべき場合でも、誤って、最後の拒絶理由通知とされている場合があります。このような場合は、審査官にその旨を指摘し、最初の拒絶理由通知として扱うように要求する必要があります。
以下に、最初の拒絶理由通知とすべき場合に、最後の拒絶理由通知とされていた事例を紹介します。
1.当初の請求項
請求項1:A
請求項2:A+B
請求項3:A+C
2.1回目の拒絶理由通知
引例1に基づき29条2項:請求項1~2
引例2に基づき29条の2:請求項3
(請求項3については、29条2項の拒絶理由なし)
3.補正後の請求項
請求項1:A+B+C
4.2回目の拒絶理由通知
補正後の請求項1は、引例1と、新たに挙げられた引例3に基づき29条2項の拒絶理由あり。
最後の拒絶理由通知とされていた。
審査官の見解では、審査基準において最後の拒絶理由を通知すべき場合とされている「審査した請求項に新しい技術的事項を付加する補正(中略)により、新たな新規性・進歩性欠如等の拒絶理由を通知しなければならないとき」(審査基準 審査の進め方4.3.3.1(1)1b)に該当するため、最後の拒絶理由通知とした、とのことであった。
5.疑問点
当初の請求項3(A+C)は、1回目の拒絶理由通知では、29条2項の拒絶理由は指摘されていなかった。補正後の請求項1(A+B+C)は、当初の請求項3を更に限縮したものであるから、審査基準において最初の拒絶理由を通知すべき場合とされている「一回目の拒絶理由通知では拒絶理由を発見しない旨を明記した請求項について、補正がされなかったり、又は、限縮する補正がなされたにもかかわらず、後に拒絶理由を発見した場合」(審査基準 審査の進め方4.3.3.2(1)1b)に該当すると考えられる。
6.本件のその後
審査官に上記5の内容を指摘したところ、最初の拒絶理由通知として扱うとの回答を得た。
弁理士 毛利大介