2011年10月13日
[ 国内知財情報 ]
著作権者の承諾を得なくても著作物を利用できる場合について
はじめに
著作権者の権利内容に抵触する態様で著作物の利用をしようとする場合は、原則、各権利者の承諾を得る必要があります。
しかし、公正な利用(著作権法第1条)という観点や、公益上の理由などから、著作権法上、著作権者の承諾を得なくても著作物を利用できる場合があります。以下にご紹介します。なお、詳細は当法人にお問い合わせください。
■ 私的使用のための複製(30条)
個人的に、又は家庭内やこれに準ずる限られた範囲内で使用することを目的とする場合には、著作物を複製することができます。
■ 図書館等における複製(31条)
政令で定められる図書館(国立国会図書館、公共図書館、大学・高等専門学校の図書館など)においては、営利を目的としない事業として、利用者の調査研究の用に供する等のため著作物を複製することができます。
■ 引用(32条)
公表された著作物は、公正な慣行に合致し、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内であれば引用することができます。
■ 教科用図書等への掲載(33条)
公表された著作物は、学校教育の目的上必要と認められる限度において、教科用図書に掲載することができます。
■ 教科用拡大図書等の作成のための複製(33条の2)
教科用図書に掲載された著作物は、弱視の児童の学習の用に供するため、その文字、図形等を拡大して複製することができます。
■ 学校教育番組の放送等(34条)
公表された著作物は、学校教育の目的上必要と認められる限度で、学校向けの放送番組において放送し、放送番組用の教材に掲載することができます。
■ 学校その他の教育機関における複製(35条)
学校その他の教育機関においては、教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業で使用するために必要と認められる限度で公表された著作物を複製することができます。
■ 試験問題としての複製等(36条)
公表された著作物は、学識技能に関する試験・検定を実施する場合に、その問題を作成するために必要と認められる限度で複製し、公衆送信することができます。
■ 点字による複製等(37条)
公表された著作物は、点字により複製することができます。
■ 聴覚障害者のための自動公衆送信(37条の2)
政令で定める者は、放送される著作物について、その著作物に係る音声を文字にしてする自動公衆送信を行うことができます。
■ 営利を目的としない上演等(38条)
公表された著作物は、非営利目的、無料、出演者等に報酬が支払われないことを条件に、上演、演奏、上映、口述することができます。
■ 時事問題に関する論説の転載等(39条)
新聞紙、雑誌に掲載して発行された政治上、経済上、社会上の時事問題に関する論説は、他の新聞紙、雑誌、放送、有線放送において自由に利用できます。
■ 政治上の演説等の利用(40条)
公開して行われた政治上の演説、陳述、裁判手続における公開の陳述は利用することができます。
■ 時事の事件の報道のための利用(41条)
時事の事件を報道する場合において、事件を構成し、又は事件の過程において見られ、聞かれる著作物の利用は許容されます。
■ 裁判手続等における複製(42条)
著作物は、司法、立法、行政の目的のために必要と認められる場合には、その必要と認められる限度において複製することができます。
■ 行政機関情報公開法等による開示のための利用(42条の2)
行政機関等は、情報公開法などの規定により著作物を公衆に提供・提示する場合は、情報公開法などに規定する方法により開示するために必要と認められる限度において、著作物を利用することができます。
■ 国立国会図書館法 によるインターネット資料の収集のための複製(42条の3)
国立国会図書館の館長は、国立国会図書館法に規定するインターネット資料を収集するために必要と認められる限度において、当該インターネット資料に係る著作物を国立国会図書館の使用に係る記録媒体に記録することができます。
■ 翻訳、翻案等による利用(43条)
30条以下の制限規定により著作物が利用できる場合において、翻案等をも同時に行い得る場合を定めています。
■ 放送事業者等による一時的固定(44条)
放送事業者は、権利者から許諾を得るなど放送権を侵害することなく著作物を放送することができる場合において、「自己の放送のため」に一時的にその著作物を録音・録画することができます。
■ 美術の著作物等の原作品の所有者による展示(45条)
美術、写真の著作物の原作品の所有者又はその同意を得た者は、これらの著作物をその原作品により公に展示することができます。
■ 公開の美術の著作物等の利用(46条)
原作品が屋外の場所に恒常的に設置されている美術の著作物及び建築の著作物については、従来の社会慣行や設置者の意思などを考慮して、権利者の利益を侵害するおそれの高い一定の利用行為を除いて、自由に利用できます。
■ 美術の著作物等の展示に伴う複製(47条)
美術、写真の著作物の原作品により、これらの著作物を公に展示する者は、観覧者のためにこれらの著作物の解説又は紹介をすることを目的とする小冊子にこれらの著作物を掲載することができます。
■ 美術の著作物等の譲渡等の申出に伴う複製等(47条の2)
美術の著作物又は写真の著作物の原作品又は複製物の所有者その他のこれらの譲渡又は貸与の権原を有する者又はその委託を受けた者について、複製又は公衆送信が一定の条件下で認められています。
■ プログラムの著作物の複製物の所有者による複製等(47条の3)
プログラムの著作物の複製物の所有者は、自ら当該著作物を電子計算機において利用するために必要と認められる限度において、当該著作物の複製又は翻案をすることができます。
■ 保守、修理等のための一時的複製(47条の4)
記憶媒体内蔵複製機器の保守又は修理を行う場合には、その内蔵記憶媒体に記録されている著作物は、必要と認められる限度において、一時的に記憶し、また保守・修理の後にその内蔵記憶媒体に記録することができます。
■ 送信の障害の防止等のための複製(47条の5)
送信の障害を防止する目的上認められる限度において、特定の者は、著作物を記録媒体に記録することが認められています。
■ 送信可能化された情報の送信元識別符号の検索等のための複製等(47条の6)
(インターネット上での)検索及びその結果の提供を行うために必要と認められる限度において、特定の者は、送信可能化された著作物について、記録、自動公衆送信を行うことができます。
■ 情報解析のための複製等(47条の7)
著作物は、電子計算機による情報解析を行うことを目的とする場合には、必要と認められる限度において、記録媒体への記録又は翻案を行うことができます。
■ 電子計算機における著作物の利用に伴う複製(47条の8)
著作物は、電子計算機による情報処理の過程において、当該情報処理を円滑かつ効率的に行うために必要と認められる限度で、当該電子計算機の記録媒体に記録することができます。
■ 複製権の制限により作成された複製物の譲渡(47条の9)
複製することができる著作物は、その作成された複製物の譲渡により公衆に提供することができます。
弁理士 岩田誠