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著作権者の承諾を得なくても著作物を利用できる場合について

はじめに
 著作権者の権利内容に抵触する態様で著作物の利用をしようとする場合は、原則、各権利者の承諾を得る必要があります。
 しかし、公正な利用(著作権法第1条)という観点や、公益上の理由などから、著作権法上、著作権者の承諾を得なくても著作物を利用できる場合があります。以下にご紹介します。なお、詳細は当法人にお問い合わせください。


 ■ 私的使用のための複製(30条)
 個人的に、又は家庭内やこれに準ずる限られた範囲内で使用することを目的とする場合には、著作物を複製することができます。
 
 ■ 図書館等における複製(31条)
 政令で定められる図書館(国立国会図書館、公共図書館、大学・高等専門学校の図書館など)においては、営利を目的としない事業として、利用者の調査研究の用に供する等のため著作物を複製することができます。

 ■ 引用(32条)
 公表された著作物は、公正な慣行に合致し、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内であれば引用することができます。

 ■ 教科用図書等への掲載(33条)
 公表された著作物は、学校教育の目的上必要と認められる限度において、教科用図書に掲載することができます。

 ■ 教科用拡大図書等の作成のための複製(33条の2)
 教科用図書に掲載された著作物は、弱視の児童の学習の用に供するため、その文字、図形等を拡大して複製することができます。

 ■ 学校教育番組の放送等(34条)
 公表された著作物は、学校教育の目的上必要と認められる限度で、学校向けの放送番組において放送し、放送番組用の教材に掲載することができます。

 ■ 学校その他の教育機関における複製(35条)
 学校その他の教育機関においては、教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業で使用するために必要と認められる限度で公表された著作物を複製することができます。

 ■ 試験問題としての複製等(36条)
 公表された著作物は、学識技能に関する試験・検定を実施する場合に、その問題を作成するために必要と認められる限度で複製し、公衆送信することができます。

 ■ 点字による複製等(37条)
 公表された著作物は、点字により複製することができます。

 ■ 聴覚障害者のための自動公衆送信(37条の2)
 政令で定める者は、放送される著作物について、その著作物に係る音声を文字にしてする自動公衆送信を行うことができます。

 ■ 営利を目的としない上演等(38条)
 公表された著作物は、非営利目的、無料、出演者等に報酬が支払われないことを条件に、上演、演奏、上映、口述することができます。

 ■ 時事問題に関する論説の転載等(39条)
 新聞紙、雑誌に掲載して発行された政治上、経済上、社会上の時事問題に関する論説は、他の新聞紙、雑誌、放送、有線放送において自由に利用できます。

 ■ 政治上の演説等の利用(40条)
 公開して行われた政治上の演説、陳述、裁判手続における公開の陳述は利用することができます。

 ■ 時事の事件の報道のための利用(41条)
 時事の事件を報道する場合において、事件を構成し、又は事件の過程において見られ、聞かれる著作物の利用は許容されます。

 ■ 裁判手続等における複製(42条)
 著作物は、司法、立法、行政の目的のために必要と認められる場合には、その必要と認められる限度において複製することができます。

 ■ 行政機関情報公開法等による開示のための利用(42条の2)
 行政機関等は、情報公開法などの規定により著作物を公衆に提供・提示する場合は、情報公開法などに規定する方法により開示するために必要と認められる限度において、著作物を利用することができます。

 ■ 国立国会図書館法 によるインターネット資料の収集のための複製(42条の3)
 国立国会図書館の館長は、国立国会図書館法に規定するインターネット資料を収集するために必要と認められる限度において、当該インターネット資料に係る著作物を国立国会図書館の使用に係る記録媒体に記録することができます。

 ■ 翻訳、翻案等による利用(43条)
 30条以下の制限規定により著作物が利用できる場合において、翻案等をも同時に行い得る場合を定めています。

 ■ 放送事業者等による一時的固定(44条)
 放送事業者は、権利者から許諾を得るなど放送権を侵害することなく著作物を放送することができる場合において、「自己の放送のため」に一時的にその著作物を録音・録画することができます。
 
 ■ 美術の著作物等の原作品の所有者による展示(45条)
 美術、写真の著作物の原作品の所有者又はその同意を得た者は、これらの著作物をその原作品により公に展示することができます。

 ■ 公開の美術の著作物等の利用(46条)
 原作品が屋外の場所に恒常的に設置されている美術の著作物及び建築の著作物については、従来の社会慣行や設置者の意思などを考慮して、権利者の利益を侵害するおそれの高い一定の利用行為を除いて、自由に利用できます。

 ■ 美術の著作物等の展示に伴う複製(47条)
 美術、写真の著作物の原作品により、これらの著作物を公に展示する者は、観覧者のためにこれらの著作物の解説又は紹介をすることを目的とする小冊子にこれらの著作物を掲載することができます。

 ■ 美術の著作物等の譲渡等の申出に伴う複製等(47条の2)
 美術の著作物又は写真の著作物の原作品又は複製物の所有者その他のこれらの譲渡又は貸与の権原を有する者又はその委託を受けた者について、複製又は公衆送信が一定の条件下で認められています。
 
 ■ プログラムの著作物の複製物の所有者による複製等(47条の3)
 プログラムの著作物の複製物の所有者は、自ら当該著作物を電子計算機において利用するために必要と認められる限度において、当該著作物の複製又は翻案をすることができます。

 ■ 保守、修理等のための一時的複製(47条の4)
 記憶媒体内蔵複製機器の保守又は修理を行う場合には、その内蔵記憶媒体に記録されている著作物は、必要と認められる限度において、一時的に記憶し、また保守・修理の後にその内蔵記憶媒体に記録することができます。
 
 ■ 送信の障害の防止等のための複製(47条の5)
 送信の障害を防止する目的上認められる限度において、特定の者は、著作物を記録媒体に記録することが認められています。

 ■ 送信可能化された情報の送信元識別符号の検索等のための複製等(47条の6)
 (インターネット上での)検索及びその結果の提供を行うために必要と認められる限度において、特定の者は、送信可能化された著作物について、記録、自動公衆送信を行うことができます。

 ■ 情報解析のための複製等(47条の7)
 著作物は、電子計算機による情報解析を行うことを目的とする場合には、必要と認められる限度において、記録媒体への記録又は翻案を行うことができます。

 ■ 電子計算機における著作物の利用に伴う複製(47条の8)
 著作物は、電子計算機による情報処理の過程において、当該情報処理を円滑かつ効率的に行うために必要と認められる限度で、当該電子計算機の記録媒体に記録することができます。

 ■ 複製権の制限により作成された複製物の譲渡(47条の9)
 複製することができる著作物は、その作成された複製物の譲渡により公衆に提供することができます。


弁理士 岩田誠

国内知財情報

2021年11月26日 機能的クレームについての技術的範囲の解釈
2021年11月16日 特許審査の進歩性判断における阻害要因について
2021年10月7日 機能で特定した抗体の発明は、特許を受けることができるか?
2021年8月24日 パリ条約に基づく部分優先の判断手法が示された裁判例の紹介
2021年6月22日 改正法情報 -権利の回復要件の緩和-
2021年6月4日 特許権等の侵害訴訟における第三者意見募集制度の導入
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2016年2月1日 食品の用途発明に関する審査の取扱いについて
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2015年8月10日 プロダクト・バイ・プロセス・クレームの訂正手続について
2015年3月27日 特許異議申し立て制度に関して
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2014年5月24日 特許法等の一部を改正する法律(平成26年5月14日法律第36号)の公布について
2014年5月23日 平成26年度中小企業知的財産活動支援事業費補助金(中小企業外国出願支援事業)
2014年5月16日 日本貿易振興機構(JETRO) 海外における知的財産権の侵害調査および権利行使(中小企業海外侵害対策支援事 業)
2014年4月1日 前置報告を利用した審尋の運用変更について
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2013年9月18日 科学技術振興機構  A-STEP:第三回公募(【FSステージ】シーズ顕在化タイプ)及び応募相談会
2013年9月16日 経済産業省:営業秘密 ~営業秘密を守り活用する~
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2012年1月25日 意匠登録料の改定(値下げ)について
2012年1月17日 審査請求料の納付繰延制度の終了について
2011年10月13日 著作権者の承諾を得なくても著作物を利用できる場合について
2011年10月6日 著作権判例紹介:ときめきメモリアル事件、三国志III事件
2011年9月30日 「明細書及び特許請求の範囲の記載要件(36条)」の審査基準改訂
2011年8月9日 著作権判例紹介:ロクラクII事件
2011年7月8日 出願審査請求料改正のお知らせ
2011年7月4日 著作権判例紹介:まねきTV事件
2011年1月20日 中小企業等特許先行技術調査事業(※今年度で終了)
2010年10月15日 平成22年度(予備費事業)戦略的基盤技術高度化支援事業の公募についてのお知らせ
2010年9月17日 新技術開発助成のお知らせ(財団法人新技術開発財団)/募集期間:10月1日~10月20日
2010年9月1日 ヒット商品に見る知的財産権シリーズ(商標)
2010年6月22日 パラメータ特許のサポート要件に関する裁判例(第10回)
2010年6月18日 新規性喪失の例外の適用について
2010年6月15日 外国出願の補助金
2010年5月28日 愛知県海外特許等取得・知的財産活用促進事業費について
2010年5月14日 ヒット商品に見る知的財産権シリーズ(意匠2)
2010年4月20日 著作権の移転登録について
2010年4月16日 ヒット商品に見る知的財産権シリーズ(意匠1)
2010年4月13日 著作物の利用について
2010年3月19日 ヒット商品に見る知的財産権シリーズ(特許6)
2010年3月12日 パラメータ特許のサポート要件に関する裁判例(第9回)
2010年2月26日 『進歩性』のケーススタディの公開
2010年2月23日 特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権などの知的財産権の侵害品
2010年2月16日 進歩性について (7) 最近の裁判例(平成21年(行ケ)第10265号)
2010年2月9日 特許・実用新案審査基準HTML版の有用活用
2010年1月19日 進歩性について (6) 最近の裁判例(平成21年(行ケ)第10080号)
2010年1月12日 パラメータ特許のサポート要件に関する裁判例(第8回)
2009年12月16日 特許活用企業事例集の紹介
2009年12月8日 進歩性について (5) 最近の裁判例(平成20年(行ケ)第10096号)
2009年11月24日 パラメータ特許のサポート要件に関する裁判例(第7回)
2009年11月20日 歴史上の人物名からなる商標登録出願の取扱いについて~審査便覧が改訂されました~
2009年11月16日 早期審査の事例紹介
2009年11月9日 ヒット商品に見る知的財産権シリーズ(特許5)
2009年11月5日 「産業上利用することができる発明」、「医薬発明」の改訂について
2009年11月3日 早期権利化のための制度紹介(グリーン早期審査)
2009年11月2日 進歩性について (4) 近年の進歩性判断基準の傾向
2009年10月29日 2009年度休日パテントセミナーin名古屋のご報告
2009年10月22日 ヒット商品に見る知的財産権シリーズ(特許4)
2009年10月14日 特許等の出願費用に対する資金的支援制度の紹介(第2回目)
2009年10月8日 ヒット商品に見る知的財産権シリーズ(特許3)
2009年10月2日 早期権利化のための制度紹介(特許出願におけるその他の制度)
2009年9月24日 ヒット商品に見る知的財産権シリーズ(特許2)
2009年9月18日 知的財産戦略を実行するメリット、持たない場合のデメリット
2009年9月9日 ヒット商品に見る知的財産権シリーズ(特許1)
2009年9月1日 特許侵害を主張する外資系企業との交渉について
2009年8月21日 早期権利化のための制度紹介(特許出願における面接制度)
2009年8月18日 シフト補正の禁止 国内優先権主張出願の場合の適用について
2009年8月15日 「特許戦略ポータルサイト」の紹介
2009年8月10日 特許権行使の戦略的な意味について
2009年8月7日 特許等の出願費用に対する資金的支援制度の紹介(第1回目)
2009年8月4日 パラメータ特許のサポート要件に関する裁判例(第6回)
2009年7月16日 設計事項について
2009年7月13日 不正競争を根拠とする商品等表示の差止が認められた事例
2009年7月10日 早期権利化のための制度紹介(特許における早期審査制度)
2009年7月7日 パラメータ特許のサポート要件に関する裁判例(第5回)
2009年7月1日 進歩性について (3)相違点に関する容易性の判断
2009年6月15日 拒絶理由通知について
2009年6月4日 他社に製品のデザインを真似されたら~意匠登録がない場合
2009年6月1日 進歩性について (2)本件発明の要旨認定~一致点・相違点の認定
2009年5月29日 パラメータ特許のサポート要件に関する裁判例(第4回)
2009年5月11日 進歩性について (1)判断手順
2009年5月7日 審査請求料返還制度のご紹介
2009年4月28日 パラメータ特許のサポート要件に関する裁判例(第3回)
2009年4月13日 中小企業等特許先行技術調査事業のご紹介
2009年4月9日 ソフトウエア特許について知財高裁が第一審の判断を取り消し認容判決(知財高裁平成21年2月18日(平成20年(ネ)第10065号))
2009年4月6日 審査請求料の納付繰延制度
2009年3月30日 パラメータ特許のサポート要件に関する裁判例(第2回)
2009年3月26日 「特許検索ポータルサイト」の紹介
2009年3月20日 分割出願可能な時期について:改正法情報
2009年3月16日 特許出願技術動向の調査の活用
2009年3月12日 プログラムが「著作物」と認められない場合について
2009年3月6日 日本において全体意匠出願の後に部分意匠出願する場合の注意点
2009年2月27日 パラメータ特許のサポート要件に関する裁判例(第1回)
2009年2月6日 微生物の寄託について
2009年2月4日 早期権利化のための制度紹介(早期審査、早期審理、面接、他)
2009年1月13日 平成20年法律改正(平成20年法律第16号)解説書について
2009年1月5日 特許・実用新案の出願様式の変更についての詳細情報
2008年12月23日 特許・実用新案の出願様式の変更

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