2009年6月4日
[ 国内知財情報 ]
他社に製品のデザインを真似されたら~意匠登録がない場合
他社に製品のデザインを真似された、又は他社の製品のデザインを真似したいという相談を受けることがあります。デザインについては物品の形態として意匠登録されれば意匠法により保護されますから、まず意匠登録があるかどうかを確認・調査することになります。
ただ実際には意匠登録がない場合も多いため、今回は意匠権以外でどこまで保護されるのかについて説明します。
■著作権法との関係について
デザインも「著作物」となれば著作権法により保護されます。ですから、これを真似する(複製又は翻案する)行為は著作権法違反となります。
しかしながら注意していただきたいのは、一般に量産される製品は、実用品に美術上の感覚・技法を応用した「応用美術」にあたることが多く、そうなると「著作物」にあたらない可能性が高くなるということです。
量産品であっても著作物性が認められないわけではないのですが、裁判例では、美術的な側面が高度な場合で純粋美術と同視できる程度のものであることが必要であるとされています。
例えば、博多人形、仏壇の彫刻、Tシャツの図柄については、著作物性を認めた裁判例がありますが、木目化粧紙の木目模様、袋帯の図柄、椅子の形状では著作物性を否定した裁判例があります。
このように量産品のデザインについては、美術的な側面が高くなければ著作権法ではなかなか保護されないことになります。
■不正競争防止法2条1項1号(商品等表示)との関係について
デザインが仮に商品等の表示にあたる場合、それが広く知られているものであれば(これを周知性といいます)、同一又は類似の表示を使用等することはできません。
この「商品等表示」の範囲は、一般的に広く考えられており、商品を個別化する手段の何であるかを問わないとされていますから、ラベルなどの標章が含まれるのはもちろん、文字や図形なども含まれます。同一の表示を付した商品が同一の営業から出たものであることを取引上認識できる程度のものであれば足りるとされています。
裁判例ではルイ・ヴィトンの著名な図柄は、長年使用されることにより識別性を有するに至ったときは表示となりうるとしています。また、Tシャツなどの装飾的ワンポイントマークに表示を認めた裁判例もあります。
そのため、製品のデザインについてもそのデザインにより商品を個別化することができるようなものであって、そのデザインがよく知られているようなものであれば、不正競争防止法2条1項1号により保護されることになります。
■不正競争防止法2条1項3号(形態模倣)との関係について
さらに、商品のデザインは、商品の「形態」の一部とも考えることができるため、「模倣」した商品を譲渡等する行為はやはり不正競争防止法違反となる可能性があります。
この場合は、日本国内に最初に販売された日から起算して3年を経過した商品には適用されません。
また何がここにいう「形態」にあたるかという点ですが、物の外観の態様であり、形状、模様、色彩などの要素を包括的に示すものと理解されています。
外観ですから、外観に関する抽象的なアイデアはここには含まれません。例えば、ベッドを折りたたんでVの字になったとしてもそれはアイデアであってここにいう「形態」にはあたりません。
そして、「模倣」については、典型的にはデッドコピーしたような場合ですが、形態が同一であるか実質的に同一といえる程に酷似していることを要するとされています。
そのため、ある程度の改変を加えることにより、「模倣」にあたらないと判断される可能性は高くなるといえます。
以上のように整理できたとしても、実際の事案では判断が難しい場合も少なくありません。そのような場合は当法人にご相談いただくことで、将来の無用な紛争を回避することができます。
弁護士・弁理士 水野健司