2011年9月30日
[ 国内知財情報 ]
「明細書及び特許請求の範囲の記載要件(36条)」の審査基準改訂
経産省のwebサイトにて、「明細書及び特許請求の範囲の記載要件(36条)」の審査基準改訂に関するニュースリリースがありました。発表資料は下記です。
■「明細書及び特許請求の範囲の記載要件」の審査基準を改訂します (特許庁 ニュースリリース)
【1】この中の「記載要件の審査基準改訂のポイント」を抜粋します。
今回の審査基準改訂では、主に以下のような改訂を行います。
(1)記載要件の審査が必要以上に厳しいケースがあるとの意見や、審査官ごとのばらつきがあるとの意見などを踏まえ、記載要件違反の判断手法を明確化します。
(2)記載要件違反であるとする具体的な理由が拒絶理由通知に記載されておらず対応に困るケースがあるとの意見や、拒絶理由通知に対する出願人の対応の仕方について明確化してほしいとの意見などを踏まえ、審査官が拒絶理由通知に記載すべき内容や、拒絶理由通知に対する出願人の対応に関する記載を明確化します。
(3)上記(1)(2)の点について、具体的な事例を用いた説明を充実させます。
※改訂後の審査基準は、平成23年10月1日以降の審査に適用されます。
【2】該当の特許庁のwebサイトにおける記事は下記です。
■「明細書及び特許請求の範囲の記載要件」の審査基準の改訂について(特許庁HP)
■「明細書及び特許請求の範囲の記載要件」の改訂後の審査基準(特許庁HP)
■「明細書及び特許請求の範囲の記載要件」の関連箇所の改訂について(特許庁HP)
■審査基準改訂案に対する意見募集の結果について(特許庁HP)
などがあります。
【3】コメント
(1) 今回の審査基準の改定は、出願人サイドにとって歓迎すべきものです。
この改定により、審査官ごとのばらつきは改善傾向となると思われます。
(2)また、拒絶理由通知において出願人の対応に関する記載が明確化されるようですので、適切な対応方針を検討する上でプラスだと思われます。
(3)さらに、事例集の内容も充実させたとのことですので、利用価値は向上しているように思われます。例えば上記改訂後の審査基準の事例15は、現行の事例集1-4に相当しますが、「出願人の対応」の部分に、「例えば、以下のように補正すれば、拒絶理由は解消する。」として、その後に補正クレーム案が例示されております。このような具体的な補正案まで例示されているので、イメージしやすくなっています。
(4)上記特許庁のwebサイト『「明細書及び特許請求の範囲の記載要件」の審査基準の改訂について(特許庁HP)』における 「2 審査基準改定のポイント ○第36条第6項第1号」の中では、例えば下記の判断手法が明確化されていることが歓迎すべき点だと感じます。
・「発明の課題」は、原則、発明の詳細な説明の記載から把握すること
・発明の課題と無関係に違反の類型(3)(「出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない場合。」)を適用すべきでないこと
・発明の詳細な説明に記載された特定の具体例にとらわれて、必要以上に特許請求の範囲の減縮を求めるべきでないこと
※今後も法人内で研究に努め、お客様のお役に立てるようにしたいと考えております。
弁理士 岡本武也