2011年7月4日
[ 国内知財情報 ]
著作権判例紹介:まねきTV事件
まねきTV事件は、インターネットを利用して遠隔地でテレビを視聴できるようにするサービスが違法か否か(著作権法上の権利侵害に該当するか否か)が争われた事件です。
東京地裁及び知財高裁は、いずれも、違法ではないとの判決を下しましたが、最高裁は、原判決(知財高裁の判決)を破棄し事件を知財高裁に差し戻しました。
H19(ワ)5765(東京地裁)、H20(ネ)10059(知財高裁)、H21(受)653(最高裁)の内容についてそれぞれ整理し、下記添付ファイルの通りまとめました。
■平成19(ワ)5765号 東京地方裁判所 著作権侵害差止等請求事件 まねきTV事件
■平成20(ネ)10059号 知的財産高裁裁判所 著作権侵害差止等請求控訴事件 まねきTV事件
■平成21(受)653号 最高裁判所 著作権侵害差止等請求控訴事件 まねきTV事件
ここでは、概要のみ簡単にご紹介します。
[事案の概要]
放送事業者である上告人(原告、控訴人)らが、ソニーの「ロケーションフリー」の構成機器であるベースステーションを用いて「まねきTV」という名称のサービス(インターネット回線を通じてテレビ番組を視聴することができるようにするサービス)を提供する被上告人(被告、被控訴人)に対し、本件サービスが、上告人らの送信可能化権(著作隣接権)及び公衆送信権(著作権)を侵害しているとして、送信可能化行為及び公衆送信行為の差し止め及び損害賠償を求めた。
[争点]
ベースステーションが自動公衆送信装置に該当するか否かが問題となった。
より具体的には、
・ベースステーションからデータを送信する主体が誰であるか
・送信の主体から見てデータを受信する利用者が「公衆」に該当するか否か
が問題となった。
[判断]
東京地裁 | 各ベースステーションは、「1対1」で送信する機能しか有していないのであって、公衆に送信を行う機能を有する装置であるということはできず、ベースステーションが自動公衆送信装置に当たるということはできない。 また、ベースステーションの所有者は利用者であり、そうするとベースステーションからデータを送信する主体は利用者である。そのデータを受信する者も利用者であるから、送信の主体(利用者)から見て利用者は公衆ではない。 かかるベースステーションは公衆にデータを送信する機能を有する装置ではないから、著作権法上の「自動公衆送信装置」にはあたらない。 |
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知財高裁 | 各ベースステーションは、「1対1」で送信する機能しか有していないのであって、公衆に送信を行う機能を有する装置であるということはできず、ベースステーションが自動公衆送信装置に当たるということはできない。 仮に送信の主体が被控訴人であるとしても、利用者は、被控訴人との間で契約しその契約内容としてベースステーションを被控訴人の事業所に寄託している者であり、このような利用者は被控訴人からみて公衆とは言えない。 かかるベースステーションは公衆にデータを送信する機能を有する装置ではないから、著作権法上の「自動公衆送信装置」にはあたらない。 |
最高裁 | 被上告人がベースステーションを事務所に設置しこれを管理しているというのであるから、利用者がベースステーションを所有しているとしても、ベースステーションを用いて行われる送信の主体は被上告人である。 何人も、被上告人と本件サービスを利用する契約を締結することにより同サービスを利用することができ、送信の主体である被上告人からみて、本件サービスの利用者は不特定の者として公衆にあたる。 ベースステーションを用いて行われる送信は自動公衆送信であり、ベースステーションは自動公衆送信装置にあたる。 |
なお、同種の事件としてロクラクII事件があります。この事件については改めて紹介したいと思います。
弁理士 岩田誠