2009年9月18日
[ 国内知財情報 ]
知的財産戦略を実行するメリット、持たない場合のデメリット
2009年8月26日付けで、中小企業経営者のための「知的財産マニュアル」という話題を提供させていただきました。
知的財産戦略マニュアル中の「1.中小企業経営と知的財産戦略」という項目に、
「知的財産戦略を実行するメリットはなんですか?」
「知的財産戦略を持たなかった場合のデメリットは?」
という2つのコンテンツがあります。非常に分かりやすいので、下記に要約して転載しておきます。
◇知的財産戦略を実行するメリットはなんですか?
(1)独自の成果について漏れのない的確な権利を取得できる
自ら成果を公知にしてしまったとか、特許はとれたが権利範囲が狭く現実の製品がガードされていなかった等、時既に遅しという事例が目につきます。まず自社の成果を漏れなく的確に権利化することがなによりも大切です。これが知的財産戦略の第一歩で、戦略を練って得られる基本的なメリットです。
(2)知財を武器に市場を維持、拡大できる
独自技術に基づく知的財産権が取得できれば、その市場を独占できるわけです。独占とまでは行かないとしても、その技術に基づく製品については他社の参入を阻止でき優位に立つことができます。それが知的財産権によって自社製品の市場が維持できる最大のメリットで、更に改良を積重ねることによって市場を拡大していくことも可能になります。
(3)知財の種々な活用によるさらなる収益の拡大
知的財産戦略のメリットは知財を武器に自社の事業そのものを伸ばして行くだけではなく、自社でできない分を他社にライセンスを与え、収益を更に確保していくことも可能です。また、開発品の事業を止めてしまった場合でも知的財産権を他社に譲渡し利益を獲得することもできるメリットもあります。
(4)他社攻撃に対する盤石な対応がとれる
知的財産戦略を練る中で絶えず問題になるのが他社の知的財産権との関係です。自社の知的財産戦略が十分できておれば、おのずと他社の知的財産権の正確な把握もできているわけで、いつ攻撃にあおうとも的確な対応がとれます。
では知的財産戦略を持たず、単に事業活動をしていた場合はどうなるのでしょう。それはメリットの裏返しです。
◆知的財産戦略を持たなかった場合のデメリットは?
(1)世の中の知的財産情報が掴めず開発が無駄になる
知的財産戦略は他社の知的財産権の動向調査から始めますが、それなくしては自社の技術が世の中の先を行っているのか、遅れているのか分かりません。闇雲に開発すれば出来上がったものが他社知的財産権を侵害する場合も生じます。その場合はすべての開発投資は無駄になってしまいます。それどころか他社に対する損害賠償の支払いといった被害を被ったり事業を撤退せねばならないこともあります。
(2)自社独自の技術について知的財産権を逸してしまう
他社の知的財産権の侵害にならない場合でも自社独自の技術について知的財産権が得られるはずが、権利の獲得のチャンスまで無くなってしまいます。従って他社の参入も時間の問題になり、市場の維持、拡大は望めません。
(3)他社との競争に勝てず市場からの撤退や倒産に至る
他社が知的財産戦略によって独自技術の権利化により競争力を身につけたが自社に知的財産戦略がない場合は何の防御もできません。知的財産権による競争力もガードもありませんから自社への注文もなくなり、市場からの撤退や最悪の場合は廃業せざるを得ない状態にまで陥ります。
特に体力のない中小企業の場合は知的財産戦略の有る無しで経営に与える影響は極めて大きいものとなります。とりわけ今日のような技術競争の時代、中小企業にとって知的財産戦略は生き残りをかけた最後の砦といってもよいほど経営戦略には欠かせないものとなっているのです。
弁理士 岡本武也