2009年3月6日
[ 国内知財情報 ]
日本において全体意匠出願の後に部分意匠出願する場合の注意点
日本の意匠出願では、先に全体意匠を出願し、その後に部分意匠(その全体意匠の部分)を出願した場合、原則的には、後の出願(部分意匠出願)は拒絶理由に該当します(意匠法第3条の2)。
しかし、一定の要件を満たす場合には、先の全体意匠出願とともに後の出願(部分意匠出願)について登録を受けられる場合があります。この点について説明します。
まず、意匠法第3条第1項には、意匠登録出願前に公然知られた意匠又はこれに類似する意匠等は意匠登録を受けられない旨が規定されています(新規性)。
また、先に出願された意匠が公報に掲載される前において、その一部と同一又は類似の意匠(部分意匠又は部品の意匠)について出願した場合には、当該部分意匠又は部品の意匠の新規性が失われていないものの、新しい意匠の創作をしたものとは認められないことから、そのような意匠についても登録を受けられない旨が規定されています(意匠法第3条の2)。
つまり、先に全体意匠を出願し、その後に部分意匠(その全体意匠の部分)を出願した場合、原則的には、後の出願(部分意匠出願)は拒絶理由を有することになります。
しかし、このような場合であっても、一定の要件を満たす場合には、拒絶理由には当たらず、後の出願(部分意匠出願)について登録を受けられる場合があります。具体的には、先の出願と後の出願とで出願人が同一であり、かつ、先の出願が掲載された意匠公報の発行の日前までに後の出願がされた場合です。このことは、「意匠法第3条の2ただし書き」に規定されています。
なお、「意匠法第3条の2ただし書き」は、平成18年法改正で規定されたものであり、この法改正の前までは、先に全体意匠を出願し、その後に部分意匠(全体意匠の部分)を出願した場合、出願人が同一であるか否かに関わらず、後の出願(部分意匠出願)は意匠法第3条の2の拒絶理由に該当していました。
このため、法改正の前までは、意匠法第3条の2の拒絶理由を回避するために、同一出願人であっても全体意匠と部分意匠とを同日に出願する必要がありました。
しかし、「意匠法第3条の2ただし書き」が規定されている現在においては、例えば、全体意匠を出願した後にその構成部分の詳細デザインが完成し、その部分意匠について権利取得の必要性が生じた場合であっても、全体意匠の出願が掲載された意匠公報の発行の日前までに、同一出願人が部分意匠の出願を行うことで、全体意匠のみならず部分意匠についても登録を受けられる可能性があります。(なお、当然ながら、部分意匠がその他の拒絶理由に該当しないことが必要です。)
従いまして、全体意匠の出願後であっても、上述した要件を満たす場合には、その部分意匠について権利取得できる可能性があります。
よって、全体意匠の出願後において、その構成部分のデザインを完成させる場合には、全体意匠出願が掲載された意匠公報の発行の日前までに部分意匠の出願を済ませるために、部分意匠出願の要否を早急にご検討されることをお奨めします。
御不明な点がありましたら、当法人までお問い合わせ下さい。
弁理士 安藤博輝