2012年6月7日
[ 海外知財情報 ]
知らないと損する!中国における知的財産戦略シリーズ_1
=早期権利化且つ権利期間最長化の戦略=
発明特許及び実用新案登録の同時出願制度の活用
発明特許及び実用新案登録の同時出願制度の活用
中国においては、同一の技術的思想にかかる発明及び考案について、同日に出願し、且つ、それぞれの申請書類に同時出願する旨を明記する限り発明特許及び実用新案登録の同時出願が認められており、この制度を活用することによって、出願から権利化までの時間を短縮しつつ、最長で出願から20年の権利期間を確保できます。
この同時出願の活用については検討する価値が十分にあると考えられます。以下に同時出願のメリット、デメリット及び注意点について順を追って説明させて頂きます。
1.実用新案のメリット
(1)権利化まで
実用新案登録出願については実体審査がなされないため、特許と比較して、権利化が容易であり、かつ、より早期の権利化が可能です。特許の場合には実体審査請求(期限は優先日から3年以内)から権利取得までに平均で2年から2.5年かかる一方、実用新案の場合には申請から登録までに6ヶ月から1年程度で済みます。
(2)権利の有効性
日本においては、実用新案の進歩性を否定するにあたり先行技術文献の数に制限はありません。一方、中国においては、実用新案の進歩性の要件は「実質的な特徴及び進歩を有すること」と定められており、一般的には3件以上の先行技術の組み合わせによって進歩性が否定されることはない旨が規定されています(審査指南第四部第六章第四節)。この点に関する限り、中国においては実用新案が無効とされる可能性は日本と比較して低いといえます。
(3)実用新案登録権者の責任
権利行使後に実用新案登録が無効となった場面において権利行使を行った者が損害賠償の責に問われ得る、というような日本に存在する制度は中国においては存在しません。
2.同時出願のメリット
(1)権利取得の可能性
何も権利が残らない、という状況を回避できる可能性が高まります。最終的に特許が認められない場合でも少なくとも実用新案登録は取得できる可能性は高いと考えられるためです。
(2)何らの権利も持たない空白期間を短縮
実用新案登録出願にて早期の権利化が可能であり、特許されるまでの間において実用新案登録を活用することができます。実用新案登録に基づき、早期に、広告宣伝、ライセンス契約、権利行使などの知財戦略を進めることが可能となり得ます。
(3)権利の一本化
最終的に特許されたならば実用新案登録を放棄して特許への一本化が可能です。逆に、特許が不要であれば特許出願を取り下げて実用新案登録に一本化しても良いです。
3.同時出願のデメリット
特許出願費用及び実用新案登録出願費用の両方がかかります。
4.同時出願制度についての注意点
(1)発明特許及び実用新案登録の同時出願制度に適用する発明対象としては、製品の形状、構造及びその組合せに限ります。方法の発明、物質の発明(例え、物質の分子構造、組成、金属組織)等の発明には前記同時出願制度が適用されません。
(2)PCT出願に基づく移行段階においては、同時出願が認めません。中国へ個別に直接出願する場合発明特許と実用新案の同時出願が可能です。
以上、中国における発明特許及び実用新案登録の同時出願制度について、簡単にご紹介させていただきました。貴社の発明を中国で権利化をする際には、ぜひこの制度の活用についてご検討ください。
また、ご不明な点はございましたら、お気軽に当法人までお問い合わせください。