2023.03.23 国内知財情報
国際出願の優先権の回復要件が緩和されます
1.概要
令和5年4月1日以降、優先権主張の基礎となる出願の日から12月を徒過した国際出願について、優先権の回復請求を受理官庁である日本国特許庁に提出する場合、優先権の回復制度の要件が「相当な注意」基準から「故意ではない」基準に緩和されます。
※優先期間を徒過した日が令和5年3月31日以前の場合における優先権の回復については、従前どおり「相当な注意」基準が適用されます。
詳しくは、以下をご参照ください。
2.背景
特許協力条約(以下「PCT」という。)に基づく規則26の2.3によれば、優先権主張の基礎となる出願の日から12月(優先期間)を徒過した場合であっても、徒過の理由が基準(※)を満たす場合、受理官庁は、出願人の請求により、優先権の回復を認めることとなっています。
※基準としては、「故意ではない」基準と、より厳格な「相当な注意」基準と、があり、いずれを採用するかは、各受理官庁の裁量に委ねられています。
受理官庁としての日本特許庁は、これまでは後者を採用していました。
「故意ではない」基準では、徒過が「故意」によるものでない場合に権利回復が認められます。
一方、「相当な注意」基準は、「相当な注意」を払っていたにもかかわらず当該期間を遵守できなかった場合に権利回復が認められるというものであり、「故意ではない」基準よりも権利回復の可否が厳格に判断されることとなっています。
現行の「相当な注意」基準下での権利回復制度では、認容率が諸外国と比較して極めて低く(約10~20%)、その判断基準が厳しすぎるとの指摘がありました。
このようなことから、制度の見直しが図られ、改正法が成立し、施行を待つのみ、という状況でした。
3.優先権回復手続の流れ
回復請求は、願書又は回復請求書で行います。
願書にて回復請求を行う場合には、所定の期間内に、徒過の理由を記載した回復理由書を別途提出します。
回復請求書にて回復請求を行う場合には、優先期間内に国際出願をしなかったことが故意によるものではないことを書面上にて表明しつつ、その理由を簡明に記載します。
4.回復手続後について
「故意ではない」基準を満たしていると判断された場合はその旨の通知が出願人又は代理人に送付されます。
「故意ではない」基準を満たしていないと判断された場合はその理由が通知されるとともに、指定された期間内(1月以内)に意見書を提出する機会が出願人に与えられます。
本件について、疑問やご質問などがあればお気軽に当法人にお問い合わせください。
弁理士:岩田誠