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『進歩性』のケーススタディの公開

2月9日付けで「特許・実用新案審査基準HTML版の有効活用」という記事を掲載しました。
その中で、進歩性のケーススタディが16件追加される予定であることをご報告しましたが、今般、特許庁HPにて追加されましたので、ご紹介したいと思います。

【特許庁HPにおける告知】
 「『進歩性』のケーススタディ」の公開について
審査基準の第2章 新規性・進歩性の欄にてケーススタディがリンクされているようです。
「進歩性」のケーススタディ

【ケーススタディの概要】
※概要のみを転載しますので、詳細は審査基準を参照願います。

(1)引用発明の認定についての【参考裁判例】

○知財高判平19.3.28(平成18(行ケ)10211「成形可能な反射多層物体」)

 審決が隣接する高屈折率の層と低屈折率の層を一対として一単位の光学的層ととらえて引用発明を認定したことは、本件発明を知った上でその内容を刊行物2の記載上にあえて求めようとする余り、認定の誤りをおかしたものとされた例

○知財高判平21.3.25(平成20(行ケ)10261「上気道状態を治療するためのキシリトール調合物」)

 被告は、引用発明の認定において、引用例2の記載が周知技術に照らせば患部が「上気道」であることを含むと理解できると主張したが、裁判所は、投与経路として鼻内投与を選択し得ることが周知であったとしても、引用例2に「気道下部」の疾患であると繰り返し述べている明白な記載に反してまで、「上気道」をも含める記載であると解することはできないとした例


(2)いわゆる「設計的事項」についての【参考裁判例】

○知財高判平20.2.21(平成17(行ケ)10506「誘電体バリア放電ランプ,および照射装置」)

 相違点は数値範囲(特定OH基の割合)であり、その数値範囲の作用効果(技術的意義)が生ずる前提となる条件(放出される光の波長)は本件発明において何ら特定されていないから、その数値範囲に格別の技術的意義はない。したがって、当該数値範囲は単なる設計的事項以上のものということはできない〔数値範囲の最適化又は好適化〕とされた例

○知財高判平15.5.22(平成14(行ケ)126「改良無緩型牽引棒組立体」)

 第2引用例の目的は、オス連結部材の端部をメス連結部材の端部に形成された空洞に簡単に挿入することである。よって、第1引用例に記載の連結部に第2引用例に記載の構成を適用するにあたり、オス連結部材の挿入方向として挿入の容易な下方を選択し、メス連結部材の端部に形成された空洞を下方に向かって開放するように部材を配置することは当業者であれば適宜採用可能な選択肢の一つである〔技術の具体的な適用に伴う設計変更〕として進歩性を否定した審決が支持された例

○知財高判平17.6.2(平成17(行ケ)10112「環状オレフィン系共重合体から成る延伸成形容器」)

 被告は、相違点である数値範囲は、当業者が、自ら許容し得る白化の程度に応じて適宜定め得る値に過ぎない〔数値範囲の最適化又は好適化〕と主張したが、裁判所は、この数値限定が特定の課題を解決し、所期の効果を得るという技術的意義を有するものであり、かつ当該課題が新規なものであるから、その数値範囲は、適宜定め得るということができないとした例

(3)具体的な動機づけについての【参考裁判例】

〔技術分野の関連性〕

○東京高判平14.7.23(平成12(行ケ)388「エンジン点火装置」)

 技術分野の共通性は刊行物1と刊行物2を組み合わせる動機づけとして働き得るものである。また、普遍的ないし周知の課題が存在する状況においては、刊行物に本件発明の課題が提示されていると否とにかかわりなく、刊行物1の発明に刊行物2の構成を適用する動機づけは存在するとして進歩性を否定した審決が支持された例

○知財高判平18.10.11(平成17(行ケ)10717「有機発光素子用のカプセル封入剤としてのシロキサンおよびシロキサン誘導体」)

 技術分野は同一であるが、主引用発明の置き換えようとする構成を、副引用発明の構成に置き換えると、出願時における技術水準では、主引用発明の構成が当初持っていた目的を達成しないことが想定される場合において、そのような置き換えが当業者に容易になし得るものとは認めることができないとされた例

〔課題の共通性〕

○東京高判平13.11.1(平成12(行ケ)238「炭素膜コーティング飲料用ボトル」)

 本願発明と引用発明とは技術的課題が相違し、引用発明に基づいて本願発明に想到する動機付けは存在しない、との原告の主張に対し、裁判所は、問題とすべきは、本願発明の技術的課題ではなく、引用発明等、本願発明以外のものの中に、本願発明の構成に至る動機付けとなるに足りる技術的課題が見いだされるか否かであり、引用発明には、本願発明に至る動機付けとなるに足りる技術的課題が認められるとして進歩性を否定した審決を支持した例

○知財高判平19.7.19(平成18(行ケ)10488「駆動回路」)

 引用例に周知技術を組み合わせる一般的な動機付けがないわけではないが、その組合せが容易であるか否かについては技術的困難性を検討する必要があり、動機付けのみで判断することはできないとした上で、引用例に周知技術を組み合わせることを妨げる事情があるから、その動機付けも弱く、相違点に係る構成に容易に想到することができたとはいえないとされた例

○知財高判平19.12.25(平成19(行ケ)10148「フィルム製容器の製造方法」)

 引用発明と本件発明とは課題を共通とするものであり、また、相違点の技術は周知であるが、引用発明に当該周知技術を適用することについては、その動機付けがないばかりか、適用を阻害する要因が存在したとして進歩性が肯定された例

○知財高判平19.3.29(平成18(行ケ)10422「耐水性で発散作用のある履物用靴底」)

 被告が、防水性をより向上させるためには〔課題〕、革製本底の上面が露出する周縁部分に対して合成樹脂を積層すればよく、そうすれば必然的に相違点に係る構成を備えたものになると主張したのに対し、裁判所は、引用例に「(防水性は)充分に効果的である」と記載されており、また引用例、周知例などには、更に防水性を高めるために「不透過性の材料でできた上部部材(周知例)」で覆うというようなことについては記載も示唆もないから、何ら裏付けがない主張であり、本願の発明の相違点に係る構成を後から論理付けしたものと判断した例

〔作用、機能の共通性〕

○東京高判平3.2.14(平成元(行ケ)90「天プラ油等の食用油の濾過装置」)

 引用例1と引用例2とが機能ないし作用の点で共通しており、必ずしも異なった技術分野の技術事項ともいえないから、引用例1記載の一部を引用例2に記載の構成に置換することは容易であるとして進歩性を否定した審決が支持された例

○知財高判平17.10. 6(平成17(行ケ)10382「クレンジングパット」)

 本件考案と引用考案は基本的な構造や作用効果において共通しており(作用・機能において共通しており)、技術分野も近接するものであるから、引用考案のヘアブラシをクレンジングパッドに転用することに格別の困難があるということはできないとして進歩性を否定した審決が支持された例

〔引用発明の内容中の示唆〕

○知財高判平21.1.28(平成20(行ケ)10096「回路用接続部材」)

 引用例には、格別、相溶性や接着性に問題があるとの記載はない上、樹脂組成物を調製する際に検討すべき考慮要素としては他の要素も存在するのであるから、相溶性及び接着性の更なる向上のみに着目して(明示的記載のない)特定の材料を用いることの示唆等がされていると認めることはできないとした上で、他の事実も総合考慮すれば、本願発明が当業者にとって容易想到であるとした審決の判断には誤りがあるとされた例

(4)周知技術・慣用技術についての【参考裁判例】

○東京高判平4.5.26(平成2(行ケ)228「土壌環境の相対湿度を制御する方法及びそれを達成するための装置」)

 拒絶の理由を発見した場合として再度拒絶理由通知を要するかどうかは、改めて拒絶理由通知をするのでなければ出願人の防禦権行使の機会を奪い、出願人に保障された利益保護に欠けることになるかどうかにより判断すべきであるとして、本件においては、周知事項を加えて進歩性がないとする審決をした場合であっても、新たな拒絶理由には当たらないと解すべきであると判示された例

○知財高判平18.12.20(平成18(行ケ)10102「シート張力調整方法,シート張力調整装置およびシートロール用巻芯」)

 審査段階では刊行物2に記載されているとしていた事項を、審判段階で周知技術であるとしたが、その事項は周知技術とは認められず、出願人に意見を述べる機会を与えなかったから手続違背であると判示された例


弁理士 岡本武也

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