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オーストラリア特許法改正(2013年4月15日発効)

◆出願に関する改正(明細書記載要件含む)について

1.新規性に関する事項

 オーストラリアにおいて、発明に係わる特許権者若しくは名義人又はその前権利者により、又はその代理として若しくはその許可を得て行われる、完全出願日前1年以内の発明の使用は、秘密使用とはみなされなくなります。

 新規性を失わないとされる猶予期間(出願前1年以内)の規定に関し、適用対象であった、特許権者等によりなされた「発明の公表又は使用」の規定が削除され、他の態様(例えば特許権者による他の開示や試作品)についても猶予期間の適用を受けることができるようになります。

2.進歩性及び革新性の基準引き上げ

 標準特許の進歩性の判断において、改正前においては、「発明が、関連するクレームの優先日前に特許地域に存在した共通の一般的知識に照らし、関連技術に熟練した者(以下、「当業者」といいます。)にとって自明である場合」に進歩性が否定されていましたが、改正により、「特許地域」という地理的制限が撤廃されます。

 また、改正前においては、2以上の先行技術情報を結合して進歩性を否定する際に、当業者が、関連するクレームの優先日前に、2以上の先行技術情報を結合されたものとして、「確認し、理解し、認めていることを合理的に期待できる」ことを要していました。これに対し、改正後においては、2以上の先行技術情報を結合されたものとして「合理的に期待できる」ことを要するとされており、発明の進歩性が先行技術情報の組み合わせによってより否定しやすくなります。

 革新特許の革新性の判断において、改正前においては、「発明が、関連するクレームの優先日前に特許地域に存在した共通の一般的知識に照らし、当業者にとって自明である場合」に革新性が否定されていましたが、改正により、「特許地域」という地理的制限が撤廃されます。

 これらの改正は、外国との進歩性判断の差を埋めるためのものであり、進歩性及び革新性の判断基準の引き上げを意味します。

3.明細書記載要件の変更

 外国の記載要件にオーストラリアの記載要件を合わせるために、明細書の記載要件が変更されます。

 発明を実施するためにさらに実験を要するような、推測に基づく発明がクレームされることを防ぐために、有用性に関する要件が追加されます。完全明細書に開示される発明(クレームされる限りにおいて)は、特定の、実質的な、かつ信頼できる使用がなければ、有用性があるとはみなされず、完全明細書には、特定の、実質的な、かつ信頼できる使用が当業者に十分に理解される程度に開示されている必要があります。

 改正前においては、完全明細書の記載要件の一つに、「発明を実施する上で出願人が知っている最善の方法を含め、その発明を十分に説明すること」が求められていました。改正後において、この要件は、「当業者が発明を実施するために十分に明確かつ十分に完全な方法で発明を開示すること」、及び「発明の実施について出願人が知る最善の方法を開示すること」に変更されます。

 いわゆるサポート要件の記載が変更されます。改正前においては、クレームが「明細書に記載されている事項に適正に準拠(fairly based on)いなければならない」とされていましたが、改正後においては、クレームが「明細書に開示されている事項に支持されて(supported)いなければならない」とされています。

4.オムニバスクレームの禁止

 発明が明細書等の特定の詳細への言及によってのみ定義できる場合を除き、オムニバスクレーム(「明細書及び図面に示された発明」等の、要件を明確に定義しないクレーム形式)の使用が禁止されます。

5.先の出願の利益を得ることができる場合の要件の変更

 明細書の記載要件において、「当業者が発明を実施するために十分に明確かつ十分に完全な方法で発明を開示すること」が求められるようになったことに伴い、先の出願の利益を得ることができるかどうかの判断基準が変更されます。優先日や仮出願日を得られるかどうかの判断においても、優先権基礎出願や仮出願に記載されている事項が「当業者が発明を実施するために十分に明確かつ十分に完全な方法で発明を開示すること」を満たしているかどうかに基づいて判断されることになります。


◆審査に関する改正について

1.審査請求に関する事項

 審査請求期限は、出願日から5年ですが、局長は、裁量によりそれよりも早い時期に出願人に審査請求の指示をすることができます。(現行の実務では、期限よりも前にこのような指示を受け取る案件が多いようです)
 局長からの審査請求指示に対して審査請求を行う期限は、改正前は局長の指示の日から6ヶ月でしたが、改正後は局長の指示の日から2ヶ月以内に短縮されます。

2.権原通知書(Notice of Entitlement)に関する事項

 権原通知書(Notice of Entitlement、発明者以外の者が出願人となる場合に、出願人が特許を受ける権利を有していることを説明する書類)の提出期限が変更されます。改正前においては、出願の受理(特許可能となる状態)までの提出が求められていました(実務上は、オフィスアクションに提出を求める文面が含まれていました)。
 改正後は審査請求時までに提出する必要があります。

3.サーチ料金の導入

 審査開始時において他国特許庁等による調査結果(国際調査報告等)が得られない場合に、局長は、審査の一部としての調査を行うことを決定することができます。局長が調査を行うことを決定した場合、局長より出願人に対してサーチ料金を支払い可能であることが通知され、出願人がサーチ料金(AU$1400)を支払うことになります。

4.予備調査及び見解書(Preliminary Search and Opinion (PSO))

 オプショナルの手続として、出願人は、予備調査及び見解書(国際調査報告及び見解書に類似した書類)を請求することができるようになります。

5.拒絶理由、異議申立理由、及び特許取消理由

 有用性の要件と出願日前(優先権を主張する場合は優先日前)の使用についても審査理由(再審査含む)、異議申立理由、及び特許取消理由に含まれることになります。

6.標準特許及び革新特許の特許性判断における判断基準

 特許性等を判断する際に、改正前の「疑わしい点を出願人に有利に解釈する(benefit of the doubt)」よりも高い基準である、「蓋然性の優勢に基づいて(on the balance of probabilities)」特許性の有無が判断がされるようになります。

7.補正ができる範囲

 改正前においては、補正により、出願時明細書に開示されていない事項をクレームすることとなるときには、完全明細書の補正が許可されないとされていました。改正後においては、補正された明細書が、出願時の完全明細書及び所定の書面に開示された範囲を超えた事項をクレーム又は開示する場合、完全明細書の補正が許可されなくなります。つまり、クレームに限らず、出願時の完全明細書等を超える補正は許可されないということになります。なお、この補正要件は、誤記又は明白な錯誤を訂正する補正、及び微生物の寄託に関する詳細を含める補正には適用されません。
 また、許可されない補正が過誤により局長に認められた場合の規定が一部変更されます。

8.修正審査の廃止

 所定の国における対応出願の審査結果を利用する修正審査が廃止され、関係規定が削除されます。

9.願書及び完全明細書の受理

 願書及び完全明細書の受理(acceptance)の期限(特許可能な状態にしなければならない期限)は、改正前においては、最初の審査報告書の日付から21ヶ月以内でしたが、改正後は、最初の審査報告書から12ヵ月に短縮されます。
 また、受理期限の延期や受理の取消しに関する規定が一部変更されます。

10.異議申立手続に関する事項

 手続的な内容に関する異議申立期限が公告から2ヶ月に短縮されます。一方、実体的な内容に関する異議申立期限は公告から3ヶ月のまま維持されます。
 また、書類や証拠の提出方法や、証拠の提出期限の延長が認められる要件、局長の権限に関する規定についても一部変更されます。


◆その他の改正について

1.分割出願ができる時期

 異議申立手続中に分割出願がされて実際の決着が後延ばしされることを避けるために、分割出願ができる時期が短縮されます。
 改正後の分割出願ができる時期は、親出願が標準特許出願である場合には、親出願の受理(特許査定に相当)の日から3ヶ月以内、親出願が革新特許出願場合は親出願の特許付与前となります。なお、親である革新特許が付与された後の分割出願ができる時期は、当該革新特許の審査の発生の通知から1ヶ月以内であり、変更はありません。
 また、標準特許出願を補正により分割出願に変更できる時期は、親出願の受理(特許査定に相当)の日から3ヶ月、又は当該分割出願の受理迄となります。

2.捺印の廃止・登録簿に関する事項

 標準特許、革新特許ともに、特許への捺印(seal)が廃止されます。改正後は、特許に関する詳細が登録簿に登録されることにより、特許が付与(grant)されます。なお、局長は、特許に係る権利に関する事項を含め、所定の事項について、蓋然性の優勢に基づいて(on the balance of probabilities)、登録簿の修正を行うことができることが規定されます。

3.弁護士・依頼者間の秘匿特権

 弁護士・依頼者間の秘匿特権が、オーストラリアの弁護士によって行われる仕事と同様の仕事を行うように依頼された外国の知財専門家と、依頼者との間の通信にも及ぶことになります。

4.その他

 対応外国出願における文献調査報告の通知に関する規定が削除されます。また、出願の取下げに関する規定、特許を受ける権利又は特許に係る権原に争いのある場合の規定、革新特許における審査証明書の取消しに関する規定、非侵害の宣言に関する規定についても一部変更されます。

 今回の改正は、対象となる出願/特許が改正事項により異なっており、非常に複雑となっているため、適用対象を記載しておりませんが、適用対象について情報をお知りになりたい場合にはご連絡下さい。

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